ここでは、来院者から多く聞かれるご質問と、その回答を簡単ではありますがまとめました。

【癌】についての豆知識

歯ブラシを持っただけで逃げ出してしまいます。歯磨きを嫌がらないためには、どうしたらいいですか。また、歯磨き以外で歯を健康に保つ方法はありますか。

まずは、口を触るところから、始めてみましょう。子供のうちから遊びの中で口に触り、口を触られることに慣れさせておくと良いでしょう。また、抱っこしながら飼い主自身が歯を磨くなどすると、歯磨きに対する恐怖心も徐々に薄れるかもしれません。
歯ブラシ以外にも、指にガーゼを巻く方法や、歯垢予防のガムや骨などもありますし、太い紐を編んだようなおもちゃも効果的です。

しきりに耳を掻いたり、頭を振ったりしています。耳が痒いのでしょうか。

耳の中に黒や茶色の耳垢がたまっている場合、耳ダニや真菌の仲間であるマラセチアという酵母菌が増えている可能性があります。治療には外耳道の清掃と自宅での点耳を行いますが、症状によっては長期間にわたることもあるので、根気のよい治療が必要です。
耳垢や分泌物が耳道にたまり、傷口から細菌に感染して炎症をおこし、耳だれという症状になることもあります。ゴールデンレトリバーや、ビーグルなど耳の垂れている犬種は、耳の中がムレやすいので特に多い傾向があります。
耳血腫に要注意。外耳炎や痒みによって、激しく耳を振り、耳をどこかにぶつけてしまったために、耳介部の皮下組織の血管が切れて出血し、耳介部が血液でパンパンに腫れてしまうことがあります。そのような状態を見つけたら、早めに診察を受けてください。

避妊手術や去勢手術はしたほうがいいのですか。健康な子に手術を受けさせるのはかわいそうな気がするのですが…。

(避妊手術) 将来赤ちゃんを産ませる予定がないのであれば、早めに手術を受けることをおすすめします。子宮蓄膿症になる危険性はなくなりますし、乳腺腫瘍の項目にも記載しましたが、早期の手術により乳腺腫瘍になる可能性は低くなります。また、特にネコは、発情期に恋に悩むこともなくなります。
(去勢手術) メスと同じで、将来交配させる予定がないのであれば、手術をおすすめします。イヌでは男性ホルモンによる前立腺癌や、肛門周囲腺腫などのリスクが減ります。雄ネコの場合、室内でのスプレーが無くなります。
A.世田谷区在住のネコの避妊去勢に関しては、世田谷区と世田谷区獣医師会による助成金制度があります。飼いネコだけでなく、飼い主のいないネコについても助成金がおります。助成金に関する書類は病院にもございますので、ご相談ください。

若いうちは健康そのものだったのに、最近よく咳をします。散歩の途中でも疲れやすくなりました。

心臓病(僧帽弁閉鎖不全など)かもしれません。心臓の聴診をしてもらう必要があります。心臓病は進行性の病気ですので、早期発見、早期治療が肝心です。内服薬で心臓病の進行を遅らせることが可能です。
A.フィラリアの寄生により、咳がでることもあります。毎年の予防をしっかりしていれば防ぐことができる病気ですので、忘れずに予防しましょう。

最近、水をすごくよく飲み、おしっこもたくさんするのですが・・・。

なんだか元気がない、食欲がない、などの症状がある場合、子宮蓄膿症かもしれません。子宮に膿がたまり、炎症を起こす病気で、命に関わることもあります。子宮蓄膿症と診断された場合、手術をする必要があります。
A.おしっこが少し臭うようなら、糖尿病かもしれません。まずはおしっこを病院で検査してみましょう。血液検査などの精査もして糖尿病と診断されたら、自宅でのインシュリン注射による治療と食餌コントロールが必要になります。

トイレに何度も行っては、しゃがんでいますが、ほとんど何も出ていません。また、おしっこの色が少し黒っぽいです。

膀胱炎、もしくは尿道結石かもしれません。特に冬は水を飲む量が減るので、膀胱に結晶や結石が溜まりやすくなり、尿道に結石が詰まってしまったりすると、おしっこが出にくくなります。重症になると、手術により石を取り除かなければいけないこともあります。初期の段階であれば、食餌により結石ができにくい状態を維持することが可能です。
ちなみに、緑色の野菜(キャベツ、レタスなど葉っぱの野菜)は尿がアルカリ性になり、結石ができやすくなるので、控えた方がよいでしょう。

おっぱいのあたりにしこりがあります。以前に比べて大きくなってきたような気がします。

乳腺腫瘍でしょう。良性、悪性様々ですが、治療は手術が主流です。悪性のものが進行すると、肺に転移することもあります。早期の避妊手術により乳腺腫瘍になる確率は低くなるので、妊娠する予定がないのであれば、避妊手術をしておくことをお勧めしています。

10歳になりました。食欲旺盛に食べているのに、最近なんだか痩せてきたようです。年齢的なものなのでしょうか。

薄いおしっこをしているようなら、慢性腎臓病かもしれません。他にも、肝臓病、体のどこかに腫瘍がある場合など、食欲があるのに痩せてきているといった状態はどこかに異常がある場合が多いので、一度診察を受けた方がよいでしょう。

おやつをあげすぎると太りますか。どのようなおやつがおすすめですか。

もちろん、おやつをあげすぎれば太ります。せっかくダイエットをしようとしてフードの量を減らしても、おやつのせいでカロリーオーバーになってしまうこともあります。
A.ごほうびとしてどうしてもおやつをあげたい、というのであればササミを乾燥させた手作りのものや根菜類、煮干し(人用)、おからなどがおすすめです。市販のジャーキーなどを与えすぎると、肝臓に負担がかかり肝機能が低下してしまったり、皮膚の状態が悪くなったり、カロリーオーバーになったりしますので、できればやめましょう。
A.ちなみに、ペットは運動で痩せることはとても難しいので、ダイエットを考えているのであれば、おやつをやめる、少しずつフードの量を減らしていくなど、食餌コントロールが必要です。

癌とはなにか。

人間と同じように、犬猫の体も小さな細胞が集まってできています。細胞は必要に応じて分裂し、古い細胞は死に、新しい細胞と入れ替わりながら健康が保たれています。
しかし、体の中で突然異常な細胞分裂がおこり、細胞がとめどなく異常増殖することがあります。それが「腫瘍」です。腫瘍には良性と悪性があり、悪性のものを「癌」といいます。
癌は最初は小さくてもだんだん増殖し、大きくなっていきます。ほかの組織や臓器に転移したり、手術で腫瘍を取り除いても、再発したりすることもあります。

癌はなぜできる?

残念ながら、癌を完全に予防することはできません。癌細胞が発生する要因はさまざまで、ふつうに生活していても、どんな犬や猫でも癌になる可能性があるといっても過言ではありません。
スモッグや排気ガス、タバコの煙や食品添加物などの化学物質をはじめ、紫外線やウィルス、老化、癌になりやすい体質の遺伝、ホルモンなどが、癌の要因とされています。

高齢になると癌になりやすい。~6歳を過ぎたら要注意!!~

本来、体には、癌を抑えるための免疫機構があります。実は、癌細胞はしょっちゅうできているのですが、健康な動物は免疫細胞によって癌を小さいうちに退治し、発症を抑えているのです。
その働きは、高齢になると弱くなってきます。そのため、人間と同じように、犬猫も生後6年を過ぎ、中年の年代にさしかかると、癌にかかりやすくなります。

飼い主にできる早期発見法 ~スキンシップを通して~

体の表面にできる腫瘍は、犬猫の体を触ることで見つけることができます。
ブラッシングの時などに、全身の皮膚に触りながら手入れをする習慣をつけるとよいでしょう。また、歯磨きをしてやる時には、口の中に腫瘍ができていないかをチェックします。
幼いうちは、抱いたり触ったりして一緒に過ごす時間も多いようですが、中年を過ぎると、スキンシップの機会が減ってくるようです。しかし、癌は高齢になってから発症しやすいので、中高年になってからも定期的なスキンシップを心がけていきましょう。

犬に多いがんの種類と特徴

犬や猫にできる腫瘍のうち、乳腺腫瘍、皮膚や口にできる腫瘍、肥満細胞腫などが全体のほぼ3分の2を占めています。これらは飼い主にも発見できるものなので、ふだんからチェックしてやりましょう。
乳腺腫瘍(乳がん) メス犬にできる腫瘍の50%を占めるほど多く見られます。乳腺腫瘍の半分は良性で、残りの半分は悪性ですが、悪性腫瘍の50%は肺などに転移します。良性か悪性かの判断は、手術後の病理検査でわかります。メス猫は犬ほど多くはありません、猫の乳腺腫瘍は80%が悪性です。生後5,6年以降のメス犬や猫に対しては、1か月に1回程度、おなか全体にやさしく触れて、しこりがないかどうかチェックしましょう。不妊手術を受けると、乳腺腫瘍の発生率が下がります。出産させるつもりがないのであれば、予防のためにも手術を受けさせたほうがいいでしょう。
リンパ腫 足の付け根や首、あごの下、おなか、胸など、全身のリンパ節にできるグリグリしたしこりで、悪性の腫瘍です。放置すると、約3か月で死に至ることもあるおそろしい病気です。ただ、リンパ腫は抗がん剤に反応しやすい腫瘍で、完治はしませんが、早期の治療により、元気に暮らすことができます。飼い主がしょっちゅう犬猫の体を触り、気になるしこりがある場合は、すぐに病院へ連れていくことが大切です。
皮膚がん 皮膚がんにもいろいろあり、その種類によってしこりの大きさや場所が違います。ふだんから飼い主が犬や猫の体を触ることで、早期発見ができます。しこりがあったら皮膚病などと自己判断しないで、まず獣医師に診てもらいましょう。
肥満細胞腫 この病気の多くは、体の表面に塊のような腫瘍ができます。下半身にできるものは悪性のものが多く、大きくなると手術しても再発しやすく危険です。皮膚のしこりのほかに、ほとんどの犬に胃潰瘍ができ、吐血して死亡する例もあります。ゴールデン・レトリバーによく見られる病気です。猫の肥満細胞腫は、良性のものが多いようです。この腫瘍は針の吸引検査で簡単に診断されます。
悪性黒色腫(メラノーマ) 口の中や皮膚と粘膜の境などに黒い腫瘍ができます。舌にできることもあり、なかには黒くないものもあります。小豆くらいの大きさのうちに取ってしまえば治ることもありますが、発見時にすでに転移していることもある転移性の強い悪性のがんです。歯みがきの際に、口の中をよく観察することが早期発見につながります。
扁平上皮がん
耳や鼻、足先、皮膚、肛門などに発症します。毛が白い犬や猫は、太陽にあたった刺激で耳や鼻先に発症することがあります。
皮膚組織球腫 顔や首、足先などに、丸いしこりができます。成犬になる前の若い犬や老犬にも見られる良性の腫瘍で、ほとんどのものが自然に消えてなくなります。

癌の治療

犬や猫にも抗がん剤を使うことがあります。
がんが疑われる場合、病院では組織の一部を切り取って、専門の検査施設に出して検査をします。その結果、がんと診断された場合は、初期のものなら切除手術を行います。抜糸をして傷口が治ってから抗がん剤による治療を行うこともあります。発見が遅れて腫瘍が大きくなっているときは、完全な切除手術ができないこともあります。そのようなときは、抗がん剤を使用したり、放射線治療を行う場合もあります。抗がん剤や放射線を用いた治療では、副作用が出ることもあります。動物に負担をかけずに治療するには、早期発見、早期手術・治療が鉄則です。